導入事例:新潟大学大学院医歯学総合研究科



概要

PCテクノロジーの発達により人工股関節置換術(THA)における支援ツールとしてナビゲーションシステムが知られるようになってきた。

システムを使いこなすようになれば非常に高精度の手術を行えることが分かってきたが、一方で非常に高価であり使いこなすのにラーニングカーブを要することやその煩雑さのため術前計画のみを使用している施設も散見される。
従来のX線画像を使った2Dでの術前計画のように簡便でかつ、3次元での術前計画を行うことにより安全なTHAを施行できる可能性をZedHipを用いて検討したので紹介する。

方法

対象

2008年10月から2009年09月でZedHipによる3次元術前計画併用THA 10関節

術前CT撮影

腸骨稜から脛骨近位端まで2mmスライス

アプローチ

supine modified MIS-Watson Jones approach(人工関節2008)

使用機種

BiCONTACT Hip System(AESCULAP/B.BRAUN)

手術

用手的にインプラントを設置

術後評価

術前と同様に術後1ヶ月以内にCTを撮影

検討項目

  • インプラントサイズ(予定サイズとの比較)
  • 手術時間
  • 設置精度(術前計画と術後評価との差)

3D術前計画

(1)-Ⅰ: 大腿骨側の参照点をデジタイズし大腿骨座標系を設定

(1)-Ⅱ: 臼蓋側の参照点をデジタイズしanterior pelvic plane(APP)を設定

(2) 3D Modelを自動で作成し骨盤と大腿骨を切り離し、必要に応じて編集を加える

(3)-Ⅰ: 臼蓋カップの設置

矢状断面での傾斜を加味した機能的骨盤基準面(FPP:functional pelvic plane)に対して骨性被覆・大腿側も加味した脚長を考慮しカップを設置

(3)-Ⅱ: ステムの設置

前捻角を後顆接線に対して任意に設定し、髄腔との適合性・オフセット・脚長を考慮しながらステムを設置

(4) 可動域シミュレーションにて確認

予定引下げ距離・術後全体像をイメージ・インプラント・骨性インピンジメントの確認をし終了術前計画に要する時間: 約20分

結果

インプラントサイズ

全例予定サイズを使用

手術時間

平均89(60~115)分

設置精度

  • カップ外方開角 平均3.8度
  • カップ前方開角 平均5.1度
  • ステム前捻角  平均7.7度

52歳 女性 両側変形性股関節症

手術時間 83分
インプラント
  • cup 48mm
  • stem#15
設置精度
  • 外方開角5.7度
  • 前方開角7.0度
  • ステム前捻角6.4度

考察

(1) インプラント

インプラントサイズは全例術前計画どおりのサイズであった。

術前計画の段階でストレートステムは前捻角によりサイズが変わる可能性が推察される。
また、挿入部位には個人差がありスターターを挿入する際の参考となる。
術中計画と異なるときは内外反・前捻角等を再検討し実際の術中対処の参考としている。

[stem12 / 前捻角0度]           [stem14 / 前捻角20度]

(2) 手術時間

術前計画を目視するのみ

特殊な術中支援は不要=通常のマニュアル手術とほぼ同様

現在術中支援簡易デバイスを開発中

(3) X線フィルムによる術前計画との違い

Ⅰ: 座標系を立てる
  • Internal controlができる
  • X線撮影手技による誤差を防げる
  • カップ前開き角の正確な評価
  • 基準面に対するカップ設置角度表示
  • 臥位における骨盤前方傾斜の正確な補正
  • 骨盤と大腿骨の相対関係の確立
Ⅱ: 可動域シミュレーション機能
  • implant vs impant
  • bone vs bone
  • bone vs implant
  • impingement
Ⅲ: 奥行きを考慮した立体計画・骨移植例などの例に有効
  • 術前イメージがつかみやすい

どの術式を選択するか?

(1) 両側骨移植併用

(2) 両側高位設置

(3) 片側骨移植併用

まとめ

  • ZedHipは術前CTデータにより約15分程度で三次元術前計画が可能
  • 骨盤及び大腿骨に座標系が組める
  • ROMシミュレーション機能により設置位置、角度の検討が可能
  • 骨移植例などの計画にも有用である。

新潟大学大学院医歯学総合研究科

機能再建医学講座 整形外科分野

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